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SORIN Newsletter Vol.1

January 2010

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百瀬 直樹
自治医科大学さいたま医療センター 
臨床工学部副技師長

ポンプシステムの進化
-閉鎖回路のレベル制御システムを実現-

 

外科医ギボンが図1に示す人工心肺を開発1)し、補助循環下で心臓手術を成功させてから半世紀が過ぎている。

ペースメーカーや人工透析装置、人工呼吸器もほぼ同時期に開発されたが、電子レンジの大きさであったペースメーカー(図2右)は 現在の500円硬貨大にまで小さくなり、その内部にコンピュータを内蔵して自動的に除細動を行うまでに進化した。透析装置は洗濯機 大で完全な手動装置(図2左)であったものが、いまでは血液回路はシンプルに標準化され、除水コントロールだけでなく自働プライミ ング、自動回収を行うまでに進化してきた。

呼吸器は、患者が中に入る鉄の肺と呼ばれた装置(図3)だったが、いまや安全装置を完備し呼吸器からの離脱まで自動的に行う。

さて、人工心肺はどうであろうか?

図1:Gibbon の人工心肺

 

写真左:白い大きなドラムがダイアライザー  写真右:白い大きな箱がペースメーカー
図2:Gibbon の人工心肺

 

写真左:鉄の肺と呼ばれた人工呼吸器  写真右:鉄の肺が並ぶ1950年代のICU
図3:開発初期の人工呼吸器

 

貯血レベルの 安定がさまざまな 利点を生む

ギボンの人工心肺(図1)は脱血不良を検出し脱血ポンプを制御したり、貯血レベルが低下すると送血ポンプの回転を制御していたが、 その後は自働制御装置がほとんどなくなり、完全な手動操作の人工心肺となる。

しかし近年、人工心肺の安全装置は再び進化が始まった。さらに不安定で体外循環血液が空気に触れる開放型回路ではなく、閉鎖回路 での体外循環を試みる施設が現れだした。私の施設も当初は開放回路を用いていたが1995年に半閉鎖回路に移行した。

1997年に完全閉鎖回路に移行し1999年に貯血レベルを自働制御するポンプシステム2)

を考案した(図4)。

図4:閉鎖回路のレベル制御人工心肺

 

このポンプシステムは、従来のように送血流量と脱血流量のバランスで貯血レベルを維持するのではなく、体外循環から貯血槽を 分離した完全な閉心筋保護液 鎖回路で、ボリューム管理は貯血槽と体外循環回路を結ぶ回路にあるVolume control pumpによって行い、 貯血槽に取り付けたレベルセンサーがVolume control pumpをon/off制御することによって、貯血レベルが常にレベルセンサーフィルターの 位置に制御される。レベルセンサーを上下させることで簡単に貯血レベルを調整できる。

このシステムの最大の利点は、貯血レベルが安定しているため、離脱時には心臓の前負荷も安定した循環補助が可能となり、 片手で体外循環の開始や離脱操作ができ、広い視野で体外循環の安全管理が行える点である(図5)。

閉鎖回路のため充填量が700mlに削減でき、体外循環血が空気に触れないという利点もある。

図5:さいたま医療センターの人工心肺風景

 

CAPSからSⅢ、S5への進化

この閉鎖回路のレベル制御システムを実現できたのはスタッカート社のCAPSポンプシステムのレベルセンサーに連動するローラーポンプの制御 と圧力による制御装置を応用したからである。

また他の多貯血槽くのメーカーのレベルセンサーがゲルを必要としてセンサーを動かせない超音波式であるのに対し、スタッカートのセンサーが 静電容量式であるのでセンサーの上下が行えた。

またひとつのポンプコンソールに二つのポンプヘッドを持つダブルヘッドポンプは、ポンプの台数が多くてもスペースを取らず、操作もしやすい。

ダブルヘッドはローラーポンプの心臓部と言えるポンプヘッドの精度が非常に高く、また構造が単純であるために実現できたと私は考えている。

CAPSはS3へと進化し脱血回路の陰圧で送血ポンプが制御できるようになり安全装置も充実した。

昨年発売されたS5はCAPSと同等にコンパクトになり、モーターとポンプヘッドのダイレクトドライブ化によってポンプレイアウトの自由度が高まった。

また装置の操作性向上のため完全デジタル化を行った。

もしギボンがS5を使えたら

閉鎖回路の問題点は脱血に流入する気泡を何らかの方法で除去しなければならず、我々は専用の装置を作成した。

機能をソフトウエア化できるためS5では気泡を検出するとポンプが回転して気泡を除去する機能などがバージョンアップで追加されることを期待している。

ギボンが夢みた人工心肺は窺い知れないが、当時ギボンのもとにS5があれば、いまとは異なる体外循環法が生まれていたかもしれない。

私はS5のような安全装置を搭載し自由度の高いポンプシステムが、安全で新しい体外循環を導くものと信じている。

 

文献
  1. Gibbon J.H, Jr. The maintenance of life during experimental occlusion of the pulmonary artery followed by survival. Surg Gynecol Obstet. 1939;69:602.
  2. Momose N, Kitamura A, Nakajima I, Ando K, Matayoshi M, Yamakoshi R, et al. A new cardiopulmonary bypass operating system permitting regulation by the surgeon in the operation field. Journal of Artificial Organs. [10.1007/BF02480017]. 2001;4(4):278-82

 

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